「あなたの会社は、何のために存在していますか?」
還暦を過ぎたビジネスマン・観人は、格差の拡大、金融経済の膨張、資本主義そのものへの言葉にならない違和感を抱え、深い暗闇へと迷い込む。そこで出会うのは、紀元前四世紀のアテナイからやってきた哲学者見習いのアリスと靴職人のテレス、そして人類の知恵を象徴する一匹のキツネ――。
世界はなぜ市場化したのか。会社とは、働くとは、組織とは、利益とは何か。三人と一匹の対話は、その根源にある「資本とは何か」という問いへとたどり着く。
上位1%が富の四割を独占し、CEOが従業員の300倍もの報酬を得る。トマ・ピケティが示した「r>g」――資本収益率が経済成長率を上回るという不等式は、働くよりもお金を持つほうが豊かになる社会の構造を暴き出す。資本主義は本当に、この不平等を運命づける仕組みなのか。
対話は、資本の語源=人間と自然にまで遡る。資本とはお金だけではない。物的・知財・人的・組織・社会・自然――七つの資本のうち金融資本だけに価値を還元し、r>gをひたすら再生産する「貧しい資本主義」。それに対し、すべての資本を豊かにし、利益をそれぞれへ循環させていく「豊かな資本主義」。両者を分かつのは資本主義の是非ではなく、「何を資本とみなし、どの資本を豊かにするか」という、人間の選択にほかならない。
アダム・スミス、カント、ロールズらの思想を手がかりに、自由と正義、そしてマネジメントの意味を根源から問い直す、知的興奮に満ちた哲学対話。ブルネロ・クチネリ、パタゴニア、モンドラゴン協同組合など、「豊かな資本主義」を体現する実在の企業も紹介し、理想と現実を結ぶ具体的なヒントを示す。
資本とどう向き合い、何を育てて次代へ渡すのか。その答えとして本書がたどり着くのは、「預かって、育てて、返す」という、太古から受け継がれてきたマネジメントの本質だ。
これは、分断と格差の時代を生きるすべての人に贈る、希望のマネジメントの物語である。
【目次】
はじめに 会社にかけられた呪文
第1部 市場化する世界 分断と違和感の源流
プロローグ 暗闇の出会い
第1章 拡大する格差と分断
第2章 揺れ動く世界と内なる規律
第3章 歴史の終わりと分断の始まり
第2部 貧しい資本主義と豊かな資本主義 会社・労働・組織・利益・資本を問い直す
第4章 会社とは何か
第5章 働くとは何か
第6章 組織とは何か
第7章 利益とは何か
第8章 資本とは何か
第3部 自由と正義 人間社会の基礎構造
第9章 自由とは何か
第10章 正義とは何か
第4部 希望のマネジメント
第11章 見ることと考えること
第12章 預かって、育てて、返す
エピローグ 豊かな資本主義の体現者たち
あとがき コッホの雪片と最初の正三角形
巻末資料 登場人物に託された意味・用語集・参考文献
