「やさしさの仕組み」を社会へ――。
個人の善意に頼り切るのではなく、やさしさを仕組みとして循環させたい。
その想いから、2019年に福島で誕生したのが「ペイフォワードカフェ」です。
見知らぬ誰かからの贈り物である、一杯のドリンクと、一枚のメッセージカード。
それを受け取った人は、もし余裕があれば、次の誰かのために、少しのお金と、メッセージを置いていく――。
ペイフォワード(恩送り)が体験できるこのカフェでは、これまでに延べ1,000人以上が、やさしさを受け取り、そして次の誰かへと手渡してきました。福島からシドニーへ、栃木へ、東京へ——やさしさの循環は、確かに広がり続けています。
ここまでの道のりには、たくさんの人との出会いと、仲間との試行錯誤、そして著者自身の経験の積み重ねがありました。
福祉の現場で、やさしさが、一部の「いい人」にばかり集中し、誰かのために懸命に働く人から倒れていく現実を目の当たりにした著者。そこから、社会の「在り方」に問題があるのではないか、と考え、ペイフォワードカフェの活動を広げながら、福祉現場、企業人事、教育という3つのフィールドで「支える人を支える」仕組みづくりに取り組んできました。
やさしさが、誰かの肩に偏る「重り」ではなく、人と人のあいだを流れる「巡り」になったとき、支える人は枯れずにすみ、受け取る人は負い目を持たずにすむ。
そしてこの社会は、もう少しだけ、生きやすい場所になるはず――。
本書では、その強い想いを胸に著者が取り組んできた「ペイフォワードカフェ」の活動を軸に、「ペイフォワードとは何か」「なぜペイフォワードは人の心を動かすのか」を考えていきます。誰か一人の善意に頼るのではなく、やさしさが循環する仕組みそのものを、社会にデザインしていくこと――それが本書を貫くテーマです。
自分の心のコップから溢れた分だけ、目の前の人にやさしさを手渡す。その行動が、社会のかたちを少しずつ変えていく。
ペイフォワードについて学びたい人に、誰かのために何かをはじめたいと思っている人に。そして、やさしさが循環する社会を、ともにデザインしていきたいと願うすべての人にお届けしたい一冊です。
【目次】
はじめに
序 章 やさしさを受け取った、ある日
第1章 ほんの少しのやさしさを、巡らせるために
第1節 不採用が教えてくれたこと——「いいこと」のはずなのに、届かなかった
第2節 恩送りをしったきっかけ——「カルマキッチン」との出会い
インタビュー① 肩に力を入れず、「受け取る」と「手渡す」を体感できる場所
第3節 「恩送り」を‟仕組み”にしたカフェ
第4節 「伝える設計」が、やさしさを動かした日 ——第1回ペイフォワードカフェ
第5節 やさしさを受け取り、やさしくなる
インタビュー② 「いるだけでいい」そう思える場所がある
第2章 やさしさのデザイン思想——支援から「循環」へ
第1節 やさしさは、なぜ流れなくなったのか
第2節 贈与は、どのようにして人をつなぐのか
第3節 やさしさの「流れ方」が違う街で
第4節 見知らぬ誰かに贈るということ
第5節 やさしさを社会の仕組みにする
第3章 やさしさが巡り続ける社会へ
第1節 巡る仕組みは、すでに世界のあちこちで
第2節 福島にも、芽は生まれている
インタビュー③ お互いさまの街・福島。
その原点が示す「やさしさの循環」の可能性
第3節 ひとりで、広げなくていい
インタビュー④ 場の温かさは、触れてみないとわからない
インタビュー⑤ ペイフォワードカフェ from TOCHIGIが示す恩送りの可能性——恩送り=「トキヲカケルオモイ(時空をかける想い)」
第4節 次の世代へ、形を変えて手渡される
終 章 やさしさは弱さではない
第1節 「やわらかな抵抗」——共感で変える
第2節 ぼく自身も、巡りの中で生かされてきた
第3節 分かち合いは、巡って自分に還ってくる
第4節 やさしさは社会をデザインする
対 談 「恩送り」を科学する
——感謝の連鎖に魅力を感じて——研究者への道
——0から1は実践、1から10は理論
——「ありがたい」と「申し訳ない」は違う感情である
——気づいていないだけで、やさしさはあるのかも
——広げ方にも「ちょうどよさ」がある
——ペイフォワードが循環する社会のために
おわりに
